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ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番 [音楽]

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(秋の青空に映える酔芙蓉)


Beethoven String Quartet No.15 (arranged by Franz Welser-Möst)
Bavarian Radio Symphony Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
June, 2017年

「人は必要な時に必要な人と出会うもの」とよく言われるが、音楽についてもそうではないかと思う。ある曲との出会い、音楽家との出会い、作曲家との出会い。ヴェルザー=メストがオーケストラ用に編曲したベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番を、数ヶ月前に初めて聴いた。そもそも弦楽四重奏曲には馴染みが薄いので、どんなものかと思いながらPCを開いたのだった。旋律美や曲の持つ清らかな空気感に感動することはよくあるのだけれど、今回ばかりは違った。心の中から何かが溢れ出すような感覚に陥ったのだった。ベートーヴェンは当時、腸カタルを患い、作曲を中断せざるを得なくなった。奇跡的に快復を遂げ、作曲を再開する。病からの治癒に感激し、神への感謝を示すために作曲された第3楽章は、神々しい光を放つ感動的な楽章だ。

ヴェルザー=メストとバイエルン放送響の演奏は、ベートーヴェンの心を照らす厳かな光や、彼の溢れんばかりの神への感謝の思いを、聴く者の心へ丁寧に刻印してゆく。今まで生きてきて、生死を彷徨ったことなどないけれど、今自分がこうして生きていること自体が素晴らしいという気持ちが沸き起こる。第3楽章の旋律を聴くたびに、自然と涙が頬を伝って流れ落ちてゆく。薄紙を剥ぐように心が軽くなり、胸の奥底に清らかな光が差し込むのだ。きっと10年前に聴いても何も感じなかったかもしれないが、今の自分には最もふさわしい曲なのかもしれない。

明日、クリーヴランド管の定期演奏会で、この曲が演奏される。WCLVではセヴェランスホールからの生中継が予定されている。ホームグラウンドのオケとどんな演奏を聴かせてくれるのか、今から楽しみでならない。そういえば、この曲は、2016年にブーレーズが逝去した際、追悼の思いを込めてセヴェランスホールで演奏されたのだった。ヴェルザー=メストとクリーヴランド管にとっては、きっと特別な曲に違いない。


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プロメテウス・プロジェクト2018(創立100周年記念ベートーヴェン・ツィクルス) [お知らせ]

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昨年のちょうど今頃、ヴェルザー=メスト&クリーヴランド管弦楽団の来日ニュースが飛び込んできた。早いもので、あれから1年。先日、招聘元のAMATIさんよりプログラムが正式に発表された。はるか彼方のクリーヴランドやマイアミのコンサートホールに思いを馳せながら、WCLVの放送を熱心に聴いた日々が懐かしい(昨今は、予算削減のため中継の数が激減している)。東京でいくつ聴けるだろうか。

フランツ・ヴェルザー=メスト指揮、クリーヴランド管弦楽団 2018年来日公演スケジュール

2018年 6月 2日(土) 18:00
「プロメテウスの創造物」作品43 序曲
交響曲第1番 ハ長調 作品21
交響曲第3番 変ホ長調 『英雄』 作品55

2018年 6月 3日(日) 14:00
「エグモント」作品84 序曲
交響曲第4番 変ロ長調 作品60
交響曲第7番 イ長調 作品92

2018年 6月 5日(火) 19:00
「コリオラン」 作品62 序曲
交響曲第8番 ヘ長調 作品93
交響曲第5番 ハ短調 作品67

2018年 6月 6日(水) 19:00
交響曲第6番 ヘ長調 作品68 『田園』
交響曲第2番 ニ長調 作品36
「レオノーレ」 序曲第3番 作品72b

2018年 6月 7日(木) 19:00 
大フーガ 変ロ長調 作品133
交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
リューバ・オルゴナソヴァ(ソプラノ)
ジェニファー・ジョンストン(メゾソプラノ)
ノルベルト・エルンスト(テノール)
ダッション・ バートン(バス=バリトン)
新国立劇場合唱団

会場:サントリーホール

チケット一般発売予定日:2017年 12月2日(土)



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チャイコフスキー 交響曲第1番 冬の日の幻想 [音楽]

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Tchaikovsky Symphony No. 1 Winter Daydreams
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
Jaunuary, 2016年

連日の猛暑日。灼熱の暑さが続く。暑い暑いと言いながら、聴いているのは真冬の曲だ。「冬の日の幻想」に出会ったのは、去年のマイアミレジデンシーだった。普段は4番、5番、6番しか聴かないので、若い頃の作品にはあまり馴染みがない。2016年1月24日の日曜日。いつものように、WCLVから流れてくる中継を録音した。その曲をiPodに同期し、家を出る。午後から休日出勤だったのだ。前半のシューマンを聴きながら、冬の青空の下を歩いた。ところが、夕方に天候が急変する。太陽の光は消え失せ、サラサラとした粉雪が降り始めた。退社する頃は、辺り一面が雪景色。急な大雪でタクシーがつかまらなかったので、ヴェルザー=メストとクリーヴランド管の「冬の日の幻想」を聴きながら、強い吹雪の中を歩いた。音楽の世界を、地で行くような不思議な体験だった。朝は掴みどころのない曲だと思っていたのだけれど、雪の中で聴いていると、音楽が体に染み込むような感覚にとらわれた。以来、お気に入りの一曲だ。先月、ヴェルザー=メストは、バイエルン放送響で同曲を指揮した。あの日の記憶が蘇ってきた。どちらも素晴らしい演奏なのだけれど、やはりクリーヴランド管の演奏を取り上げよう。独特の優美さと芯のある響きは、私を惹きつけてやまない。オケと指揮者の一体感、流麗さと力強さは、チャイコフスキーでも健在である。

第2楽章の解釈がとりわけ秀逸だった。白いキャンバスの上で、淡いグラデーションが広がってゆくかのような繊細な世界に魅了される。オーボエ、チェロ、ホルンが、順番に旋律を奏でながら、様々な楽器が色を添えてゆく。なめらかにたゆたう音楽の流れは、ヴェルザー=メストの真骨頂だ。オーケストラは、第1楽章での弾力性のある力強い響きから一変し、精緻な趣きをみせる。雪の中に消えてしまいそうな儚さ。音符に秘められた作曲家の淡い感情まで見え隠れする精巧な解釈に、耳が釘付けになるのだ。言葉にならない寂しさを湛えた世界。このまま夢が覚めなければいいのに、世界は闇のままで、闇が明けなくてもいい...と何度思ったことか。

両端楽章の疾走感と飛翔感も魅力的だ。ヴェルザー=メストはとても速いテンポでオケをドライヴするのだけれど、全く弛緩することがない。堅牢さと清澄さを両立させた響きが、いつまでも耳から離れなかった。


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