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ブラームス 悲劇的序曲 [Johannes Brahms Cycle]

紫紺野牡丹.JPG

(今年最後の縮景園。紫紺野牡丹の紫が鮮やかでした。)


Brahms Tragic Overture, Opus 81
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
February 2015, Severance Hall

ブラームスチクルスレビューの最後は、悲劇的序曲です。偏らずにいろいろな作曲家の音楽を聴こうと思っていたはずが、ついついヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラのブラームスに手が伸びた一年でした。交響曲とピアノ協奏曲は何回再生したかわからないほどです。

ヴェルザー=メストの悲劇的序曲は、インターネットラジオを通して4種類聴いたことがあります。2014年1月のセヴェランスホール定期演奏会、9月のプロムス、ヨーロッパツアー(コンツェルトハウス)、そしてDVD収録された2015年の定期演奏会です。

冒頭の和音から、非常に引き締まった硬派な響きが印象的です。クリスタルガラスのような透き通った響き、速いテンポ、縦の線をきっちり合わせた合奏力、しなやかに舞うような優雅さ。ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの音楽の特性がよく表れた演奏だと思います。とりわけ、甘さを抑えた筋肉質な響きは、歩むべき人生への決意表明のような毅然とした曲想とよくあっていて、大変魅力的です。


今年は、欧州の主要オケへのデビューラッシュでした。コンセルトヘボウ管、シュターツカペレ・ドレスデン、ゲヴァントハウス管。コンセルトヘボウ管とのブルックナーは、あとからじわじわとその良さが伝わってくる名演だったと思います。先日、2020/21シーズンより、ウィーン国立歌劇場の総裁が交代するというニュースが入ってきました。オペラでのウィーン復帰もいよいよかもしれません。個人的には、GMDに返り咲くよりも(それはないと思いますが...汗)、客演しながら他のオケとの関係を深めてほしいと思っています。2018年のニューイヤーコンサートの指揮台に立つ可能性はあるでしょうか。そろそろお正月に姿を見たいものです。年始のWCLV(1月1日の午前10時)は、いつもどおりヴェルザー=メストのシュトラウスが聴けますので、どうぞお見逃しなく。

ではみなさま、よいお年をお迎えください。
今年もお読みいただきありがとうございました。






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ブラームス ピアノ協奏曲第2番 - Johannes Brahms Cycle No. 9 [Johannes Brahms Cycle]

縮景園


Piano Concerto No. 2 in B-flat major, Opus 83
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
Yefim Bronfman, piano


県立美術館で開催中の東山魁夷展の帰りに、縮景園に立ち寄った。台風前の生憎の天候ではあったけれど、空を見上げると、雲の隙間から秋のはじめの澄明な陽光が、木々へ降り注いでいた。紅葉が始まろうとしている。

初秋にふさわしいピアノ協奏曲第2番は、作曲家として充実期にあるブラームが、イタリア訪問に感銘を受けて作曲した。明るい曲調ながらも、ブラームスらしい翳りのある情熱的な旋律が美しく、心の綻びるような感傷に浸らずにはいられない。


ヴェルザー=メストとブロンフマンが、曲について大変興味深いコメントを寄せいているので紹介したい。端的に言ってこの演奏会、ヴェルザー=メストとブロンフマンの、曲の本質を見抜くバランス感覚が思う存分発揮された名演だ。(翻訳は、昨年のBSプレミアムのキャプチャを引用させていただいた。)

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ブロンフマン:「書かれた通りに素直に演奏すればよいのです。ことさら重厚にする必要はありません。」

ヴェルザー=メスト:「第1楽章は素晴らしいホルンの独奏とピアノの掛け合いで始まりますが、そこが重厚になりすぎると最終楽章が滑稽に聴こえてしまいます。」 「こういった曲は「旅」に似ていて、出発する時にはゴールを決めておかねばなりません。これが第2番の難しいところです。第1楽章を見た目通りに演奏すると本来の行き先を見失ってしまいます。4楽章全てを理解すれば、正しい道筋を通って「旅」を完結することができるのです。」
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まさにそうなのだ。私はあの冒頭を重厚に演奏されるのがとても苦手だった。ライヴで聴いたTimothy Robson氏は ” From the opening horn solo, beautifully played by principal horn Richard King, and Yefim Bronfman's first entrance one had the sense that this was a special performance. “と記している。日本語でいうところの「これは名演の予感がした!」だろうか。


第1楽章。
ホルン首席リチャード・キングさんの温もりのあるソロを、ピアノが丁寧に受け、スミスさんのフルートが橋渡しをする。最初の独奏からブロンフマンの音色が出色だ。ブロンフマンはペダルを巧妙に駆使し、堂々とした響きの中に嫋やかさを覗かせる。トゥッティが演奏する生命力に満ちた力強い旋律は、東山魁夷の『行く秋』の世界の如く、眩しいほどに燦々と輝く。ヴェルザー=メストとクリーヴランド管は、雲一つなく晴れ渡った天色の空のような清らかな響きを保ちつつ、毅然とした雰囲気でブロンフマンに応える。


第2楽章。ピアノの旋律を聞いた途端、心に痛みが走る。暗い深海でひっそりと孤独を味わっているかのような感覚だ。人生は落胆の繰り返しと言わんばかりの陰鬱な雰囲気は、いかにもブラームスらしい。美しさと沈鬱な面持ちが混じりあったピアノが心に滲み入る。


第3楽章。泣いても泣いても涙が溢れ出てくるような底知れぬ空虚感。過ぎ去った日々に想いを馳せながら、残りの人生を穏やかに生きたいと願っているかのようだ。静謐の空間に身を置きながら、ブラームスの心の中には何が浮かんでいたのだろう。首席チェロ、マーク・コソワーのさんの深みのある情緒的な音色が、もうそれはそれは素晴らしく、身も心も綻びるかのようだ。ブロンフマンは、淡く儚げなタッチで、静かに寄り添う。


第4楽章。ガラリと雰囲気が変わり、ピアノもオーケストラも今にも踊り出すかのように軽やかだ。酸いも甘いも噛み分けたブラームスがたどり着いた境地とでも言うのだろうか。この上なく優美にオーケストラを響かせるのは、ヴェルザー=メストの十八番。歯切れよく粒立ちのよいブロンフマンのピアノ、しっとりとした弦、端正な木管、全てが一体となり輝かしいフィナーレを迎える。


途中胸が張り裂けそうなくらい苦しい旅路だったけれど、ゴールした瞬間の清々しさといったらもう!フランツ先生は、実に巧みに私たちを引率してくれたのだった。


明日の朝9時から、WCLVで再放送があります。
まだの方は是非聴いてください!!
11/12シーズンのマイアミレジデンシーのブラームスはこちらから視聴可能です。






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ブラームス ピアノ協奏曲第1番 - Johannes Brahms Cycle No. 8 - [Johannes Brahms Cycle]

Johannes_Brahms_1853.jpg


Piano Concerto No. 1 in D minor, Opus 15
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
Yefim Bronfman
February 2015, Severance Hall


芸術や芸事の世界では、師匠ほど将来を左右するものはない。いくら才能があっても、自分の手を引っ張ってくれる人に出会えなければ、大きなチャンスは訪れにくいものだ。

もしブラームスが、シューマンに見出されることがなかったとしたら、彼の音楽はここまで受容されなかったのではないか、と思うことがある。早熟の素晴らしい才能の持ち主ではあったけれど、元来の内向的な性格のゆえに、作品を書いては捨てるを繰り返していたらしい。シューマンによって表舞台には出たものの、周囲の嫉妬ややっかみに、焦りや苛立ちを感じたであろうし、恩師の名に恥じない作品が書けるのかどうか、葛藤の連続であったはずだ。追い打ちをかけるようにシューマンの死がブラームスを襲う。
そういった状況の中で誕生したのが、ピアノ協奏曲第1番だ。「圧倒的な若いエネルギーに満ちた作品」とヴェルザー=メストが力説するとおり、円熟期の2番とは正反対の曲想だ。堂々たる雰囲気の中にある、ブラームスらしい甘く切ない旋律が心に沁み入る。


第1楽章。強烈なティンパニーのロールを期待していると肩透かしを食らうだろう。ヤンチッチ先生は確かにアップで映るのだけど、これ見よがしには聞こえてこない。ティンパニーの響きにさえ、気品があるのだ(ただこれはヴェルザー=メストの時だけかもしれない。ドホナーニさんが客演すると、ヤンチッチ先生の響きは変わるので!) 。序奏での、音の厚み、広がり、まとまりが唖然とするほど素晴らしい。轟音のような強烈さではなく、毅然とした凛々しい雰囲気が漂う。念のため2012年のセヴェランスホールでの同曲を聞き直してみた。ほぼ同一だったので(完成度は2015年の方が断然良いですよ)、これはヴェルザー=メストの解釈と考えて間違いないだろう。


ブロンフマンは強い個性の持ち主というより、鍵盤の上で自由自在に伸びやかに演奏する人だ。ダイナミックレンジが驚くほどに広い。体躯を存分に活かしたパワフルなフォルテは、若いブラームスの世界によく合っているし、第2主題をこの上なく繊細に奏でているのも素晴らしかった。


クララ・シューマンを想いながら書かれたという第2楽章。中間部のクラリネットとオーボエの儚げな旋律に聴き入ってしまった。
第3楽章。冒頭から、ブロンフマンのくっきりとした音の輪郭、生き生きとしたピアニズムがキラリと光る。ヴェルザー=メストとオーケストラの伴奏は、暗から抜け出し颯爽と歩き始めるブラームスをイメージさせる。時折現れる哀切なメロディを、ブロンフマンは重くならずにさらりと弾きこなしていた。




ハイドンの主題による変奏曲 - Johannes Brahms Cycle No. 7 - [Johannes Brahms Cycle]

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(八重のムクゲです。)



Variations on a Theme by Haydn, Opus 56a
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
February 2015, Severance Hall


クラシック音楽には、ブラームスの交響曲第2番のように、瞬く間に虜になる曲と、とっつきにくい曲があると思う。ハイドン変奏曲は、私にとっては後者の曲だ。先日、過去の録音したネットラジオを整理中に、ヴェルザー=メストが2011年のウィーンフィル定期で同曲を指揮していたのを見つけた。きっと自信のある曲なのだろうな。当時ハイドン作とされていた(最近の研究では違うようです)主題は、親しみやすく、木管の優しい音色が印象的だ。野に咲くタンポポのような素朴な主題から、R.シュトラウスの交響詩に匹敵する雄大な変奏曲を生み出したブラームスは、やはり天才としか言いようがない。去年のBSの放送から1年を経て、ようやくその良さが分かってきたと思う。


1873年、ブラームスはミュンヘン郊外のトゥッツィングで、夏の休暇を過ごす。2つの弦楽四重奏曲を作曲した後、交響曲第1番を完成させる代わりに、ハイドン変奏曲を作曲したという。この頃はすでに作曲家としての名声を確立し、実り多い時期であったようだ。このハイドン変奏曲には2台のピアノバージョンもあるらしいので、今度ルプーとペライアの演奏を聴いてみようと思う。


聴かせどころを心得たヴェルザー=メストの確かなタクトと、それにきっちりついてゆくオーケストラが今回も素晴らしかった。随分と速いテンポ設定をしているにもかかわらず、アンサンブルが瓦解しないのはオーケストラの底力の表れだ。


颯爽とした瑞々しい響きの第1変奏からは、新しいことを始める前の、期待を膨らませて心躍らせる情景が浮かぶ。第2変奏は緊迫感のある短調。キビキビとした棒さばきが心地よい。険しい上り坂を終えて一休みするようなイメージの第3変奏では、明朗な木管の響きが秀逸だ。停滞期で苦しい時期を淡々と過ごすかのような第4変奏では、情感は抑えめに、滑らかに音楽が進む。ここを重たくしないのは、ヴェルザー=メストらしいと思った。翻って第5変奏は、パッと視界が開けるかのごとく明るさを取り戻す。そして個人的に最も好きなのは第6変奏だ。人生の絶頂期にいるような光景であったり、はたまた、子供たちがオーストリアの田舎で鬼ごっこをしているような様子が浮かんでくる。ヴェルザー=メストとオーケストラは、非常に快活なテンポでもって駆け抜ける。指揮台の上で飛び跳ねる姿には思わず笑ってしまった。団員さんも微笑んで和やかな雰囲気だ。人生の終盤へと向かうかのような第7変奏では、しっとりとした弦楽器の響きが心に沁み入る。後世への不安を感じさせる第8変奏、スミスさんの変幻自在のフルートが出色だ。大袈裟かもしれないけれど、8つの変奏が人生そのもののように感じられる。


フィナーレは、様々な苦難を乗り越えて辿り着いた境地のよう。フィナーレを聞くと、すべての人へ心から感謝する気持ちが沸き起こってくる。コーセル氏のクレーンカメラを使用した演出が、幸福感の充溢するセヴェランスホールの雰囲気を余すところなく捉えていた。


ちょうどオンデマンド中ですが、
こちらもぜひ映像でご覧になってください。



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参考資料
Cleveland Orchestra Program Note

ブラームス交響曲第2番 - Johannes Brahms Cycle No. 6 - [Johannes Brahms Cycle]

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(アマリリスが今年も見頃です。)


Symphony No. 2 in D major, Opus 73
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
October 2014, Musikverein


ブラームスの交響曲第2番は、実演で聴いた初めてのクラシック音楽です。友人が所属する学生オケのチケットを、義理で買ってなんとなく聞きに行ったところ、あまりに素晴らしくてしばし呆然となったのを鮮明に覚えています。いわゆる予習をしたわけでもなく、予備知識なしで聴いて瞬く間に惹きつけられてしまったのですね。その演奏会の翌日、CDショップのクラシック音楽売り場に行き、「昨日聴いた曲が欲しい、確かブラームスの2番だったよね・・・」と陳列棚を必死に探したものです。偶然手にとって購入したのは、ケルテス指揮&ウィーンフィルの録音でした。当時は開放感のある第4楽章が好きでしたが、最近は明るい曲調に潜む儚さや憂い、翳りに惹かれます。


2014年9月にムジークフェラインでライヴ録音されたヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの第2番。同年1月にはセヴェランスホールで、夏のBBCプロムスでも取り上げています。というわけで、エアチェックした音源は3種類ありまして、2014年は個人的にブラームスイヤーでした^^


クリーヴランドーケストラは、ジョージ・セル以降のすべての音楽監督とブラームスを録音しています。マゼールさんやドホナーニさんの録音は、重心が低く、適度な句読点があり、ドイツ的な正統派ブラームスですが、ヴェルザー=メストの場合は、自身がインタビューで答えているとおり、歌謡性豊かな解釈です。溜めの代わりに歌心があるとも言えます。


ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの演奏は、透明度の高さであったり優雅さや流麗さに注目が集まりますが、堅牢な土台の上に成り立つ麗しさというのが的確だと思うのです。音の厚みはそのままに、洗練された清澄な響きは、まるでシンクロ選手のキレのある演技、バレエダンサーの鍛えられた足の筋肉のようであります。

例えば、冒頭のホルンとスミスさんのフルートの掛け合い、それに続くチェロの調べひとつをとってみても、名状しがたい響きに圧倒されます。なんて嫋やかな音色なのだろう、と冒頭から酔いしれてしまうのです。最初を聴いただけで、これは名演になると会場の人は予想したことでしょう。早めのテンポで俊敏なイメージを与えつつも、ブラームスの音楽が持つ憂いや儚さといったものを自然と感じさせます。しみじみとした趣のある第2楽章、溌剌とした第3楽章も聴き入ってしまいました。第4楽章。強奏でもやはり音が濁らず、自然な高揚感に溢れたフィナーレです。今シーズン、そうです、今週土曜日のシーズンフィナーレで退団される日本人奏者Yoko Mooreさんの凛々しい表情が抜群に良いです。ふたたびオンデマンドで視聴可能ですが、これはぜひともDVD/Blu-rayで堪能してください!




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ブラームス 交響曲第1番 - Johannes Brahms Cycle No. 5 - [Johannes Brahms Cycle]

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(写真は桃花。ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの1番は、この桃花のよう清澄なイメージです。)

Symphony No. 1 in C minor, Opus 68
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
September 2014, Royal Albert Hall


ザルツブルク音楽祭のブログに、ヴェルザー=メストのインタビューが掲載されている。ウィーンフィルのこと、共演する歌手、R.シュトラウスに対する思い、そして今夏のダナエの愛について熱く語り、クリーヴランドオーケストラの音色にも言及している。”Its sound is silvery, elegant, transparent, singing, intimate, brilliant, never forced, and bright colours dominate.” ふと"bright colour"に目が止まった。


これまでよく聴いていた小澤さんとサイトウキネンオーケストラのブラームスは、翳りや憂いを帯びたサウンドだ。クリーヴランドの音色は確かに明るいのだが、燦々と輝くようなイメージではなくて、純度の高い暖色系の音色とでもいうのかしら。明るめのトーンが意外にもブラームスの1番によく合っていると思う。


約20年の歳月を経て遂に完成した第1番、重厚に粛々と開始するのではなく、ぐっと押さえて、しなやかに音楽が始まる。この出だしが非常に良い。忍び足で始まる舞踊のようでもあり、実に優雅なのだ。そういえば箏の先生に、10割の声ではなくて、7割くらいの声で余裕を持って歌うのが良い、と教わったことがある。ヴェルザー=メストとクリーヴランドの演奏にもそういう部分があって、パワーで弾き切るのではなくて、良い意味で余裕が感じられる。歌唱的な響きを全面に出したブラームスではあるのだけれど、時折エッジの効いた鋭い響きも聞こえてくる。grazioso (優雅に)というブラームスの指定を正確に体現したような第3楽章も心地良い。第3楽章が始まる前に、クラリネットのマッケルウェイさんとアイコンタクトをするマエストロの表情も微笑ましかった。



"FWM様式" [Johannes Brahms Cycle]

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普段、ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの情報源は、英語と独語の媒体です。悲しいくらい日本語の情報がないのですね。多くの人にとっては、「クリーヴランドオーケストラって、今誰が音楽監督?」くらいの勢いかもしれません。そんな中、久々に音楽雑誌でブラームスの録音が大絶賛されていたので、その一部をご紹介します。小さな記事なのですが、ファンとしては天にも昇る心地です。特に音楽現代の上地さんは、クリーヴランドとヴェルザー=メストの良記事をよく配信してくださります。



「オケ全体の響きが、しっとりと落ち着いた重厚な味わいを持ち、厚みのある弦の響きの上に温かい音色の金管、木管楽器が程よい色合いを添え、まるで良き時代のヨーロッパのオケのよう。ブラームスに何とも似つかわしいのだ。それに奇を衒わず作品に真摯に向き合うヴェルザー=メストの指揮ぶりも非常に好ましい。この第4番はもちろん、ロンドンでの第1番、ウィーンでの第2番、第3番でも非常にテンポ感がよく、しかもクライマックスでの高揚も見事で、ここまでオーソドックスな演奏で非常に濃い味わいの解釈を聴かせられるようになったヴェルザー=メストの内面の充実ぶりに目を見張った。」(『レコード芸術』3月号 海外盤REVIEW 中村孝義氏)



充実のクリーヴランド・コンビネーション
「ブラームスの全交響曲を録音したことは、北米の正統的音楽ファンの間では高く評価されており、既にそのアプローチは「FWM様式」とよべるほどの確固たるものとなった。FWMは群を抜く粘り強さで、作品をリサーチし、楽員との対話を続ける指揮者だ。彼がロンドン・フィル、NYフィル、ボストン響、クリーヴランド管を相手にしたリハーサルを、それぞれ見学したことがあるが、殆どブレイク・タイムなしで、アンサンブルを纏めていることに感心したものである。」(『音楽現代』 3月号 アメリカ通信 上地隆裕氏)



WCLVの放送予定が更新されています。
来月は久々にヴェルザー=メストの運命が聴けそうですね。この勢いでベートーヴェンとマーラーも録音してくれるといいなあ。

ブラームスの詩魂 - Johannes Brahms Cycle No. 4 - [Johannes Brahms Cycle]

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Symphony No. 3 in E minor, Opus 90
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
October 2014, Musikverein


クララ・シューマンはブラームスとの書簡の中で、交響曲第3番について次のように述べている。
「なんという作品!なんという詩魂!全体を通して流れる、調和ある情調!すべての楽章があたかもひとつの流れのように、ひとつの心臓の鼓動のように、各楽章が宝石です。」(『ベルトルト・リッツマン編、原田光子編訳『クララ・シューマン ヨハネス・ブラームス 友情の書簡』P. 261)


今回のブラームスチクルスの録音そのものが、私にとっては宝石のようであり、それぞれが独自の輝きを見せている。どれかひとつを選ぶなんて絶対にできないのだけれど、ひときわ光彩を放っているのが交響曲第3番だ。目下いちばんのお気に入りでもある。2014年の初回の感想を読み直してみると、放送が始まった途端にラジオに釘付けになっていたようだ。


第1楽章からとろけさせるような耽美的な響きで聴き手を圧倒する。16人の第1ヴァイオリンが一つの楽器のようになり、ブラームスの心の奥底に潜む感情を、艶かしい響きでもって吐露する。ヴェルザー=メストは提示部の繰り返しを省略し、ドラマティックに流麗に展開部へと進めてゆく。その展開部で、チェロが悲痛な面持ちで旋律を歌い上げる部分、2014年にラジオで初めて耳にした時、きっとオケを相当煽っているに違いないと感じていたのだけれど、予想どおり激しいタクトさばきだった。(なんだか答え合わせをして正解した気分^^) 


マッケルウェイ氏のたおやかなクラリネットの響きで始まる第2楽章では、一変してゆったりとした穏やかな世界に酔いしれる。第3楽章は風の中を淑やかに舞うように始まり、幽玄的な世界を描き出す。ブラームスの詩魂を体現したような演奏だ。柔軟性と優美な質感を兼ね備えたオーケストラの響きを堪能できる。
第4楽章では、強奏でも音が濁ることなく、品位を保ったまま、毅然とした雰囲気で旋律を歌い上げる。昨夏のレオノーレ序曲で見せたあの気迫を彷彿とさせるヴェルザー=メストの勇姿、第1ヴァイオリン奏者の真剣な眼差し、その瞬間を捉えたブライアン・ラージ氏の演出が秀逸だった。



内側から滲み出る輝き Hidden passion - Johannes Brahms Cycle No. 3 - [Johannes Brahms Cycle]

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Johannes Brahms
Symphony No. 4 in E minor, Opus 98
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
January 2014, Severance Hall


ボーナストラックのインタビューで、ブラームスの交響曲についてヴェルザー=メストは以下のように語っている。
“The underlying tone in all Brahms symphonies is sort of hidden passion. I believe that his music has inner glow which you have to bring out."
(ブラームスの交響曲の基調トーンは秘めた情熱。)


第1楽章。冒頭からヴァイオリンセクションが、堰を切ったように哀愁に満ちた旋律を滔々と歌い上げる。シ−ソ−ミ−ド−♫のパッセージを早めに処理することで、寂寥感や諦念といったものよりも、切迫感ややり場のない思いを強く感じさせる演奏だ。ヴェルザー=メストの言う「内側から滲み出る情感」を、すべての楽器が一糸乱れぬアンサンブルで表現する。
木管セクションの奏でる第2主題も、憂いを帯びた柔らかな音色だ。コーセルさんの映像は、フィーチャリングされている楽器をクローズアップしてくれるので、初心者に優しい。クラリネットのマッケルウェイさん、フルートのスミスさん、オーボエのローズンワインさんのやりとりが、視覚的にもよく分かる。


荘厳なホルンで開始される第2楽章。ヴェルザー=メストとクリーヴランドオーケストラの佳処がもっともよく現れるのは、こういった緩徐楽章だと思う。傷心を癒すかのような中間部の旋律を、非常に繊細で奥行きのある演奏で聴かせてくれる。セヴェランスホールの壮麗な天井やホールの装飾をクローズアップする映像演出も、精巧な響きとよく合っている。


第3楽章。強奏になっても透明感のある艶やかな響きはそのままに、颯爽と駆け抜ける。
第4楽章。非常に引き締まった緊迫感のある演奏が、晩年のブラームスの境地を想起させる。ラジオで聴いたときも圧倒されたが、中間部のスミスさんのフルートソロがやはり素晴らしかった。膨らみのあるたおやかな響きだ。



アスリートのようなストイックさ - Johannes Brahms Cycle No. 2 - [Johannes Brahms Cycle]

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Johannes Brahms
Violin Concerto in D major, Opus 77
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst
Julia Fischer, violin
January 2014, Severance Hall


ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、長らく苦手な曲の代表格だった。長大な第1楽章を、スローテンポで情感たっぷりに演奏されると、もーお腹いっぱい・・・すみません、となって脱落してしまうのだ。そんな私の苦手意識を完全に拭い去ってくれたのが、これまたクリーヴランドオーケストのとある演奏会だった。忘れもしない2012年5月のカーネギーホール公演。幸運なことにライヴ放送があったので、インターネットの前でスタンバイしていた。もともとはブロンフマンがピアノ協奏曲第2番を弾く予定だったが、急遽キャンセルし、ギル・シャハムのヴァイオリン協奏曲に演目が変更された。なんとなく聞き始めたところ、今までに聞いたことのないようなブラームスにすっかり魅了され、以来、どんなタイプの演奏も聴けるようになったというわけだ。「ブラームスのVn協奏曲って、こんな曲なんですよ、みなさん聞いてみて」。本曲のエッセンスを余すところなく伝えるギル・シャハムに、心底感動したものだった。



第1楽章。冒頭の第1主題からクリーヴランドオーケストラの純度の高い演奏に惹きつけられる。清澄な響きとふんわりとした質感が程よくブレンドされ、実に心地良い。やや早めのテンポでのトゥッティが終わった後、颯爽とユリア・フィッシャーの独奏ヴァイオリンが入る。彼女はブラームスのコンチェルトに何らかのストーリーを見出すことはない、とインタビューで語っているとおり、実直に音楽と向き合う姿勢がうかがえる。艶やかさであるとか、気迫、情熱といったものよりも、アスリートのようなストイックさが前面に出ていると思う。だからといって淡々としているわけではない。瑞々しい音色と精緻な演奏は、オーケストラとヴェルザー=メストの音楽に実によく溶け合っているのだ。ノーブルな紺のドレスは彼女の楚々とした魅力を引き立てる。


第2楽章。ローズンワインさんの嫋やかなオーボエを堪能した後(この方のオーボエにはいつも陶酔してしまう)、フィッシャーのヴァイオリンがその旋律を引き継ぐ。節度を保った折り目正しい彼女の音色がこの上なく秀逸だ。
軽快な第3楽章。最後までストイックに駆け抜ける独奏ヴァイオリンを、ヴェルザー=メストの軽妙なタクトでオケ全体が手堅くサポートする。聴き終わった後の爽快感は本ディスクの白眉とも言えるだろう。今回のユリア・フィッシャーのヴァイオリン、知・情・意で考えると、情の部分がもう少しあれば、と感じることもあったけど、ライヴ録音でのこの完成度には感嘆するばかりだ。



(マエストロによると、ユリア・フィッシャーのIQは160以上だそうです。)



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