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マーラー 交響曲第9番 (Update) [音楽]

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(カーネギーホールでのマーラー9番。Photo: Chris Lee )


Mahler Symphony No. 9
The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst, conductor
January, 2018
4/23までオンデマンド

去る1月14日の朝、WCLVでクリーヴランド管の定期演奏会を聴いた。曲目は、マーラーの交響曲第9番。すでに2ヶ月が経過しようとしているが、未だに私の心を捉えて離さない。

ヴェルザー=メストは、本曲について長文のエッセイを書いている。大変興味深い内容だ。人生の歓喜と悲哀、希望と落胆。マーラーは、第九番交響曲において、あらゆる感情を総括して捉えているのだと力説する(インターミッションの一部が聞けます)。

それらの感情を、実に自然な音楽の流れのなかで、切々と表現したのがヴェルザー=メストとクリーヴランド管の演奏だ。時に穏やかに、時に荒々しく聴く者の心を揺さぶり、深い余韻を残す。

第1楽章。若かりし頃への憧憬なのか、悟りの境地へ達しているのか、何とも言えない幽玄的な雰囲気に包まれている。ヴェルザー=メストがクリーヴランド管から引き出す音色は、真冬の青空に差し込む太陽のような清廉さと力強さを備えたものだ。15年間の実績に裏打ちされた、一点の曇りもない確かな指揮。個々の音やフレージングは自然であるにもかかわらず、集結された時に現れる音の勢いや凄みが圧倒的だ。1月の寒い朝に、毎日聴き惚れてしまった。全てを委ねたくなるような不思議な吸引力が存在する。その力は、楽章が進むにつれて、静かな炎をあげながら加速する。

第2楽章。前半は陽気で滑稽なワルツが続く。キビキビとした小気味よいテンポで進んでゆくが、次第に陰鬱な様相を呈す。一糸乱れぬ不気味な響きに、思わず震え上がってしまった。(これは、これは、録音なのに!)

第3楽章の緊迫した雰囲気には、特筆すべきものがある。マーラーの生への最後のあがき、(ヴェルザー=メストの解説によると)周囲への反撃を表現した楽章である。耳をつんざくような強烈な金管、弦、打楽器、木管が複雑に絡み合い、突進してゆく。ここでヴェルザー=メストは手綱を一切緩めず、これでもかというくらいオケをドライブする。中間部の光が差し込むニ長調の旋律も束の間、闇を一気に突き進む。第2楽章と同様、妖しく凄まじい響きに圧倒され、呆然とさせられた。現実に戻れなくなるほどの抗えない魔力を備えた解釈なのだ。

第4楽章。永久の眠りへの不安と、浄化された感情が交錯する。薄明かりの清澄な光の中に身を委ねているかと思えば、暗闇を彷徨う。行き交う感情の流れを、ヴェルザー=メストとクリーヴランド管は、比類ない精緻な演奏で表現する。消えゆくように終わった後のセヴェランスホールの静寂を、ラジオ越しにも感じることができた。


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